時計仕掛けのレイライン

 

−陽炎に彷徨う魔女−

 

一言レビュー

序盤はスロースターター、エンジンがかかってからが勝負

 

グラフィック 9点
シナリオ 9点
ボリューム 8点
快適さ 7点
満足度 10点
総プレイ時間 42時間
総合評価 90点

 

 

 

ある日、一通の手紙が送られてきた。

送り主は、私立天秤瑠璃学園。

同封されていたのは、入学案内と入学手続きの書類、

そして小さく折りたたまれた手紙だった。

『あなたの叶えたい望みは何ですか』

そう記された言葉に、ふと兄の病気が治る事を願う。

その途端、手紙からあふれ出た淡い光が沢山の青い鳥に姿を変え、

空の向こうへ飛び去って行った。

 

天秤瑠璃学園は山の上にある全寮制の学校。

入学当日、女生徒に触れないほうがいいと忠告された彫像を、

窓から降ってきた男子生徒を助けるために踏み壊した久我満流は、

ホームルーム後に学園長に呼び出され、

銅像を壊す原因となった男子生徒、

烏丸小太郎も責任を感じてついてきた。

銅像を踏み壊した罰として、どう見ても少女にしか見えない学園長に

にこやかに命じられたのは、

学園で遺品が原因で起こる様々な問題を

調査・解決する機関、特殊事案調査分室で働くことだった。

 

夜になると風紀委員と特殊事案調査分室の者以外は

厳しく帰寮させられる学園の夜の秘密。

それは、夜を告げる鐘の音と共に、

学園が一気に闇に浸食される魔術が発動し、

夜の世界へと姿を変え、夜の生徒が登校することだった。

彼らは、異世界の住人だという。

初代の学園長は紛う事なき魔女であり、この学園は彼女が集めた魔術道具

通称、遺品(ミスト)と呼ばれるアイテムが封印されているが、

封印が完全ではなく、時折呼び出されて使用されてしまう。

封印の一つが壊した銅像だったため、

より一層遺品が呼び出されることが多くなっていた。

 

 

という、ファンタジー色の強い学園ものです。

夜の世界に居残り、遺品が起こす様々な事件を解決していくうちに、

夜の世界とは何なのか、夜の住人達とは何者なのか、

この学園の真の目的とは何なのか、

というものを解き明かしていくことになります。

 

最初は実にスロースターターです。

一作目は終盤でようやくちょっと面白くなり、

二作目終盤でプレイヤーを巻き込んでいく爆発力を見せるのですが、

何しろそこへ至るまでの時間が結構かかります。

しかし、二作目終盤でがっつりプレイヤーをのめり込ませる起爆力があり、

その後は掴んで離さない疾走力があるのは実に見事です。

二作目終盤であることが明らかになってから、

のめり込んでしまい、一気にプレイしてしまいました。

三作目からは全体的に目が離せなくなります。

 

サブヒロインルートはあるものの、とてもおまけ感が強い。

彼女たちのルートへ進むと学園の謎を追うことはなくなり、

ひたすら恋愛ルートに進みます。

どのサブヒロインも魅力的なのですが、

あくまでもこのストーリーはメインヒロインである鹿ケ谷憂緒の為にあり、

メインヒロインが好きになれないとちょっと問題があるかもしれません。

 

今作で追加されたシナリオ「陽炎に彷徨う魔女」も、

設定や各キャラクターを上手に使い、

作品に融合させているのは感心しました。

三作+αで見事に纏まっている作品です。

 

 

 

システムはやや悪い〜普通です。

アドベンチャーに必須のシステムは一通り揃っています。

履歴からジャンプできるのは良いですね。

残念な点が、一度○ボタンを押しも文字送りがされないことです。

どうもセリフ途中で立ち絵が変化する場合は

何度もボタンを押さなければならないようで、

立ち絵が数パターンに渡って変化する場合は

何度も押さなければならず、非常に面倒です。

そして、オートモード、スキップモード、次の選択肢へのジャンプ、

全てショートムービーで強制解除されます。

この歯車のショートムービーが実に頻繁に作中に出てくるため、

その度に一々設定し直さなければならないのが大変煩わしい。

 

また、テキストがほとんど視認できない短時間で一瞬表示され、

次のテキストへページ送りされてしまうことがよく起こります。

その度に履歴を見なければならないのが面倒です。

セーブは選択肢でセーブしているのに、

その直前のテキストが表示されるのが残念です。

それ以外は特に問題ありません。

オートモード中に何も操作しなければ

光度が落ちるというVITAの欠点の制御はされています。

 

 

 

グラフィックは可愛らしい絵柄ですが、

比較的好き嫌いの無い万人向けです。

塗も丁寧でふんわりした塗なのですが、

前にプレイしたティアブレイドが

抜群の着彩力を持っていただけにちょっと見劣りしました。

アドベンチャーとしては悪くはないと思います。

 

 

CGの枚数は差分抜きで黄昏が67+おまけ2枚、

残像が67+おまけ2枚、朝霧が46枚+おまけ8枚、

陽炎が8枚+おまけ4枚、合計188枚+おまけ16枚です。

ミドルプライスなものの、三作で分割されて

制作されたからこその贅沢な枚数だと思います。

差分もたくさん用意されています。

ただ、CGによっては顔が非常に不安定な人物がいます。

リトと鍔姫が特に顕著で、CGの顔立ちにかなり違和感があるのが残念。

デフォルメ絵は52枚ですが、こちらは完成度が高いです。

 

 

 

プレイ時間は約42時間程度。

時間が表示されないタイプで

正確な時間が分かりませんので約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

サブヒロインはあくまでもおまけですが、

全体的なストーリー自体はしっかりとしており、

最後まで終わらせるとすっきりと丸く終わらせられます。

細かい伏線も丁寧に回収されており、

今作で追加されたストーリーも

外伝ながらもうまく取り入れられています。

スロースターターなのがいささか問題なものの、

面白くなってからの起爆力、

ストーリーの組み立て方が見事な作品です。

ちょっとファンタジックなストーリーが読みたい方には是非お勧めです。




HOME    BACK

inserted by FC2 system