ティアーズ・トゥ・ティアラ

−花冠の大地−

 

一言感想

大きな時代のうねりを感じる抜群の面白さ

 

グラフィック 9点
シナリオ 10点
ボリューム 8点
快適さ 7点
システム 7点
満足度 10点
総プレイ時間 60時間
総合評価 91点

 

 

辺境の民ゲール族の住むエリン島には、

未来を予言することのできる神託の巫女リアンノンがいた。

帝国の襲撃を予知したリアンノンは嘘をついて一族の者を全員村の外へ逃がし、

一人、村で帝国の者を待ち受ける。

自分を利用するのならば、死を選ぶと

己に刃物を突きつけて誇り高く告げる彼女の前に突き出されたのは、

逃がしたと思っていた一族の子供達だった。

抗うことを許されず、真名も奪われ、

真名でもって行動も、魂ですらもがんじがらめに縛られたリアンノンは

成す術もなく帝国の司祭ドルウクに連れ浚われる。

すべてが終わった後に帰ってきた一族の者達は、

次期族長の妻となるリアンノンを浚われたことに激怒する。

もう二度と、引き返さないという証に村を焼き払い、

帝国に牙を剥くことに決めたゲール族はリアンノンを救うために

手に武器を持って救出に向かった。

 

おりしも儀式の真っ最中、世界に破滅をもたらす者とされる、

復活した伝説の魔王の前に、人形と化した、

すべての自由を奪われたリアンノンが生贄として突き出されるその場に、

リアンノンの兄アルサルが駆けつける。

その生贄をもってして世界を我に与えよと告げる

ドルウクに迎合するかに見えた魔王は、

真名でもって自由を縛られたリアンノンを解き放ち、

反対にドルウクを殺め、己の参謀役である賢者オガムとアルサル達と共に、

儀式の場から逃げ出した。

 

帝国に背いてしまったからにはもう、村には戻れない。

行き先に悩むゲール族に、オガムは古代王国アルビオンがあったとされる

アルビオン島の、封印された古代の城塞都市アヴァロンを紹介する。

エリン島を逃げ出した一族達は、アルビオン島に向かった。

 

妖精達に守られた城塞都市アヴァロンに逃げ込み、

制裁を加えようとする帝国の兵士達と戦っていくうちに、

古代王国アルビオン建国までの歴史が語られ、

なぜ世界が斯くあるのかというのがつまびらかにされるという、

時代のうねりと躍動感溢れるストーリーです。

 

 

ストーリーは抜群に良いですね。

自体が動き出したとき、目を見張るような展開と、

キャラクター達が一気に成長した姿を見せます。

階段を駆け上がって行くかのような目の覚める展開は

流石としか言いようがありません。

ただし、途中で中弛みするのです。

具体的に言うと、三章から六章ぐらいまで、九章から十章ぐらいまで。

とにかく延々と蟹や猪を狩り続けていたりします。

三〜六までは、少しずつ仲間が集まっていく過程が語られているわけなのですが、

とにかくストーリーはスローペース。

キャラクター達が非常に魅力的であり、会話がとても楽しいゲームなのですが、

このあたりのまったりと過ごしつつも

友好を温める部分がちょっと長いですね。

ストーリーがほとんど動かなくなってくるので、少々退屈になってきます。

ここを乗り越えられれば俄然面白くなってくるのですが、

少々動かない期間が長すぎると思います。

もうちょっとこの前半部分に、

プレイヤーを退屈させず、興味をひきつける山場が欲しかったと思います。

ただ、ストーリーと設定、キャラクター達は魅力的であり、

彼らの動かし方はとても上手いです。

ストーリーのためにキャラクター達が配置されているのではなく、

反対にキャラクター達がストーリーをぐいぐいと引っ張っていく

力強さや輝きの強さは素晴らしかったです。

 

 

グラフィックですが、とても魅力的で愛らしい絵柄。

二人の絵師さんが男女をそれぞれ担当しているのですが、

統一感があり、上手にまとまっていると思います。

各キャラクターの描き方も非常に魅力的です。

原画も担当絵師さんが手がけているので、

立ち絵とCGとキャラクターイラストの差もまったくなく、

とてもバランスよく描かれています。

立ち絵の種類も豊富で、十分な数がありますね。

 

CGの枚数は約70枚。

ちょっと少ないかな、とも思うのですが、差分はそれなりに用意されており、

ストーリー上でテンポ良くCGが公開されていくので、

あまりCGの枚数の少なさは気になりませんでした。

そして、大画面でも十分耐える、とても美麗なCGです。

PS3ということで、大画面で表示されるのを想定して、

かなり大きくCGを描いているみたいですね。

色の発色もすばらしく良く、塗りの美しさも文句のつけようがありません。

色の深み、グラデーションの描き方等とても美しいです。

アドベンチャーは無理してPS3で出さなくてもいいのでは…

と思っていた私の目を一気に覚まさせてくれるだけの

気迫ある、とても綺麗なCGでした。

流石PS3だけのことはあると、唸るものがありましたね。

3Dのキャラクター達のできはあまりよくないのですが、

そこは大きな会社ではないということで妥協、でしょうか。

またアニメーションが、造形、彩色ともに出来が悪いのが足を引っ張ります。

アニメーションは非常に残念でした。

 

 

次にシミュレーションパートですが、

非常にオーソドックスなタイプになっています。

前作の「うたわれるもの」のシステムを継承しつつ、

無難なラインでまとめて来ています。

今回はターン製のバトルで、こちらから攻撃を仕掛け、

ターンを終了すると相手側のターンになる。

正面よりも側面、裏面のほうが攻撃力・命中率UP、

ZOC有りと、ごく普通のシステム。

ただ、敵の行動パターンはこちらが敵の攻撃範囲に入ってきたときのみ

動くという一定パターンだけでしたので、

もうちょっと色々なパターンを工夫して欲しかったですね。

 

「うたわれるもの」より受け継いでいるのが、

攻撃したり、されたりするごとに溜まっていくチェーンストックです。

攻撃するときに円状のエフェクトが出ますが、

この時タイミングよくボタンを押すと、

チェーンストックを消費して連続攻撃を仕掛けてくれます。

ただし、今回はかなりシビアなタイミングとなっており、

キャラクターごとにボタンを押すタイミングが違うと、

難易度が一気に跳ね上がっています。

実際に最終チェーン数である4つ目までチェーンを繋げられるようになるのは

本当に終盤も終盤であり、難易度の高さもあいまって

結局最後まで最終チェーンまで繋げることなく終わってしまいました。

「うたわれるもの」は簡単すぎたのですが、

今作はちょっと難しすぎたと思います。

ただ、チェーンストックは魔法の攻撃力・移動後に使用不可解除や

必殺技にも必要であり、使うところに困ることはないのですが。

 

今回追加になったのがそれぞれの持つ属性です。

好調期というものがあり、また、属性ごとに相性があります。

好調気の場合はパラメータUP、属性相性は攻撃力に影響され、

弱点相性ならUP、相反属性ならば大幅DOWNとなっており、

相手側と同じぐらいのレベルならば、

この相性をきちんと考えて攻撃させる必要が出てきたりして、

戦闘の幅が広がっています。

成長するごとに覚えるスキルや、

リーダーになっているときにのみ発揮されるリーダースキルも面白く、

結構シミュレーション部分に手が加えられていますね。

 

今回仲間になる人数が少なく、

メインキャラクターだけでは最大出撃数に足りません。

ですので、兵站所で用兵を雇い、彼らを育成していくという

システムが追加となっています。

これが結構面白いシステムなのですが、

メインキャラクター並みの活躍をさせようとすると、

マメに職種を変えていき、パラメータの一部と

スキルの引継ぎをしなければならないのですが、

職種を変えるとスキルレベルとレベルが1になってしまい、

また一から育てなおさなければいけないのが非常に面倒でした。

レベルは上がりやすいものの、複数人育てているとその手間は膨大であり、

スキルレベルが1になるのはともかく、

レベルをいきなり最低まで落とす必要はなかったのではないかと思います。

システム自体は面白かったのですが、

もうちょっとこの辺に気を使って欲しかったですね。

 

 

基本システムはごく普通の出来。

私はインストールなしでプレイしましたが、

セーブデータのローディングやシミュレーションフィールドの表示に

4〜10秒弱ほど、イベント時は15秒ぐらいかかるのがちょっと遅いですが、

我慢できない時間でもありません。

インストールすればもうちょっと短縮できるはずですので、

長いと感じる人はインストールするのがお勧めですね。

他の表示は3〜5秒前後と、結構軽く仕上がっています。

 

アドベンチャーに偏っているゲームなだけあって、

今回加わっているオートモードはとても便利でした。

履歴からの声の再現も可能、スキップも有りと、まずまずのシステム。

戦闘速度も調整でき、最速にすると抜群にテンポ良く戦闘ができて、

とても良いシステムだったと思います。

特に問題なく、ローディングがやや長めなのが

ちょっと気になるぐらいでした。

 

 

プレイ時間は、傭兵を6人育て、一周して70時間。

通常のプレイでは一週40〜60時間ぐらいかかると思います。

ボリュームは通常レベルですね。

ただ、傭兵を育てるというやりこみがあるので、

そちらを重点的にやるともうちょっとかかると思います。

 

戦闘システムは通常レベルに揃えられており、

独自のシステムもちらほら見受けられます。

シミュレーションパートはそこそこの出来で、

シミュレーション好きでもそれなりに楽しめます。

ストーリーが抜群に良い、壮大なシナリオのゲーム。

ただ、中弛みするのが少々問題なのですが、

そこは我慢してプレイすることをお勧めします。

このゲームのキモは展開が動きだしてからであり、

中弛みする部分を乗り越えれば一気に面白くなってきます。

 

ギャルゲー要素が強く、そういう部分も少々あるので、

広い層に手に取ってもらえないのがとても勿体無いです。

ストーリーが進みだすと女性キャラクターがなりを潜め、

主要男性キャラクターが俄然輝きだすので、

実は女性にお勧めなゲームです。

ギャルゲー要素を抜いても、十分勝負できるだけの力量のあるシナリオですので、

次回は是非そういう要素を抜いて、万人向けに作っていただきたいと思います。

シミュレーション好きな方、アドベンチャー好きな方に

是非ともお勧めしたいゲームですね。

素晴らしいシナリオでした。



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