ティアーズ・トゥ・ティアラU

覇王の末裔

 

一言感想

前作よりUPした躍動感のあるストーリーとシステム

 

グラフィック 8点
シナリオ 10点
ボリューム 9点
快適さ 6点
システム 6点
満足度 9点
総プレイ時間 94時間
総合評価 86点

 

 

属州総督の地位にあった、ヒスパニアの元王家にして、

先代バルカ家当主が反乱を企て、その咎として処刑されてから7年後。

舞台は神聖帝国の属州として

苛烈なまでの仕打ちに晒されて喘ぐヒスパニア。

当代のバルカ家当主であり、先代の息子、

ハミルカルは帝国の厳しい監視下に置かれ、

奴隷のように働かされて、執拗な責め苦を受けていた。

 

帝国を油断させるために、軟弱なうつけ者人物を演じ切っていたハミルカルは、

ある日女神だと名乗る少女、タルトと出会う。

その日から、停滞しつつあった運命が音を立てて動き出した。

優しく、情に篤く、この世界のありとあらゆるものを

美しい、素晴らしいと目を輝かせて見つめる少女。

彼女との短い日々は心安らかなひと時だった。

 

だが、その陰で神聖帝国の者たちが動き出していた。

7年に一度開かれるバール大祭。

それを機に、何か不吉なことが起こりつつあるのを知っていたハミルカルは、

きつい言葉を投げつけて、タルトに咎が及ばないように遠ざけた。

しかし、バール大祭で見せしめの生贄として、

縛り付けられ引き出されたのはタルトだった。

それを見た途端、ハミルカルが今まで抑え込んでいた

復讐の思いが堰を切って溢れ出る。

大きな時代のうねりが、バルカ家当主のハミルカルと、

女神タルトを中心として、ヒスパニアと神聖帝国を飲み込みつつあった。

 

 

という、前作から数年後、

黄昏の時代を迎えつつある神聖帝国の西部に位置する属州、

ヒスパニアで起こった、反乱から発展した争いの物語です。

時折強歩になりながらも、前作を超える

圧倒的な疾走感で走りきるストーリーは素晴らしい。

前作であった中弛みはほぼなく、

ぐいぐいとプレイヤーを引っ張って行ってくれる、

圧倒的なパワーに溢れています。

動乱の中、うねりの様な強い力で動いていく

群像劇を見事なまでに描き切っているのは前作以上です。

ただし、ストーリーとしての面白さや、

世界の真理の深淵を覗き込むという意味合いでは前作の方が優れていますので、

どちらがより素晴らしいとは言い難く、

この辺は好みの問題かもしれません。

 

 

 

グラフィックですが、前作とは違った絵師を採用しています。

ふんわりとした色合いが綺麗な、

可愛らしくも繊細で美しい絵柄。

前作は目にちょっと特徴のある絵でしたが、

こちらの方がより一層万人向けですね。

華のある繊細な絵だと思います。

立ち絵とCGにも差がなく、統一感があり、

どの絵も構図が良く、一枚の絵として完成されています。

立ち絵の種類も豊富で、十分な数がありますね。

 

CGの枚数は39枚。

前作は70枚近くありましたので、かなり少なく、

色の発色も、塗も背景も綺麗で、

どの絵も素晴らしいだけにそこが非常に残念です。

もう20枚ぐらいは最低限欲しかった。

 

3Dのキャラクター達の出来ですが、今回はデフォルメキャラを採用しています。

やはりこれも前作同様お世辞にも良いとは言い難いです。

各キャラクターの特徴を良くつかんではいますが、

これでシナリオ中に演技をさせるのは正直言って厳しい。

オープニングアニメーションは躍動的な動きがあり、

なかなか良かったのではないでしょうか。

 

 

 

次にシミュレーションパートですが、

基本は非常にオーソドックスなターン制バトルになっています。

前作のシステムをほぼ忠実に継承しつつ、その難易度は別物まで進化しています。

やや温めの難易度だった前作とは大きく違い、

普通のSRPGで執る戦略が効かないという、

非常に噛みごたえのあるシステムです。

敵の戦士系のユニットですら広範囲魔法を駆使し、

パラメータを上げる補助魔法を積極的に使って攻めてきますので、

とても難易度が高くなっています。

こちら側も良く考えて動かさなければならなくなっており、

回復役や補助魔法役が少なく、敵ユニットの防御力の高さや

圧倒的な物量差に泣かされます。

ある程度のレベルアップが必須であり、

またマップ毎のギミックも良く考えられており、

戦術を練る必要性があるのも難易度の高さに加担していますね。

このあたりの難易度は人によって好悪がバッサリ別れるかと思います。

 

 

今回追加になったのが動物ユニットの乗り降り、

クアトリガでユニットの交換、協力攻撃です。

動物ユニットに乗ると、動物と人間の内、

パラメータが優れている方が採用されるユニットになるのですが、

2ユニットが1ユニットになってしまうのが非常につらい。

追加でユニットを出せるのかというとそうでもないので、

敵の物量差に押し潰されそうになる事と、

動物に乗れるキャラそのものがとても限られているということもあって

あまり使用しませんでした。

この辺もうちょっと工夫をしてほしかったところ。

 

クアトリガという、象が引っ張っている乗り物の中に、

待機中のキャラクターがおり、ユニットを交換できるのですが、

1ターンで1ユニットしか出せないというのが使い辛い。

前作の外伝のように簡単に、ペナルティなく交換できるのが

快適で面白かったので、より一層不便になった

ユニット交換は不満の一つです。

また、クアトリガ自体のユニットが数マスの幅を取るものであり、

非常に移動がしづらい。

SRPGらしく、側面や背面に攻撃されると、

正面より大ダメージを受けますので、

こちらでなかなかユニットの向きを変えられないシステムは

使いにくく、厳しいユニットでした。

 

協力攻撃ですが、このシステムが解放されるのがかなり遅く、

またできるキャラクターの組み合わせが限られており、

ある特定の条件を満たしている必要があると、

使用するにはかなり難のあるシステムです。

狙って行かなければ協力攻撃を繰り出すのは難しく、

強力なのですが、これもあまり使用しませんでした。

いろいろ思いつくのは良いのですが、

もうちょっと快適さに気を使ってほしかったですね。

 

 

 

基本システムはごく普通の出来。

たまにバグか何かでアドベンチャーパートや、

戦闘パートを早送りしている時に止まってしまうことがあります。

この辺はアップデータで修正されるのを期待したいです。

 

今回はインストール有りでプレイしましたが、

ほとんどローディングもなく、ここは快適でしたね。

基本的なシステムはほぼ搭載されており、

アドベンチャーに必要なシステムもきちんと用意されています。

画面の位置を任意に調整可能なのは良かった。

前作では絵が切れてしまっていたところがありましたので。

他は特に問題ないと思います。

 

 

 

プレイ時間は、一周して94時間。

通常のプレイでは一週60時間ぐらい、

おまけの難易度の高いダンジョンをクリアしようとすると

120時間以上かかると思います。

ボリュームは結構多目ですね。

 

戦闘システムは進化が見られるものの、

快適さにもう少し気を配ってほしかった。

システムの目の付け所はいいのですが、

快適さを置き去りにしているところがあります。

この辺もスティングらしいと言えばそうなのですが。

また、難易度はアドベンチャーパートに偏っているタイプとしては

非常に難易度が高く、アップデートでベリーイージーが搭載されましたので、

シナリオを純粋に楽しみたい方はそちらを推奨します。

さすがはスティング製というべきでしょうか。

 

 

ストーリーが抜群に良く、キャラクターが魅力的なシナリオのゲームです。

圧倒的な疾走感で最後まで駆け抜けてくれるのは素晴らしかった。

ただ、終盤でちょっと息切れしてしまっているところもありましたが。

 

今回はギャルゲー要素が排除されていますので、

大手を振って万人にお勧めできます。

シミュレーション好きな方、アドベンチャー好きな方に

是非ともお勧めしたいゲームですね。

ただし、アドベンチャーパートがかなり長いです。

アドベンチャーパートが三分の二、

SRPGパートが三分の一ぐらいの配分ですので、

その辺は考慮に入れてください。

ただ、この作品の最大の魅力はストーリーですので、

仕方がないところもあります。

とても素晴らしいシナリオでした。




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