月に寄りそう乙女の作法

 

〜ひだまりの日々〜

 

一言レビュー

シナリオの格差が激しすぎる

 

グラフィック 7点
シナリオ 7点
ボリューム 6点
快適さ 8点
満足度 8点
総プレイ時間 20時間
総合評価 75点

 

 

 

日本の財界を代表する大蔵家の嫡子と、

そのメイドの間に生まれた大蔵遊星は、

父の本妻に疎まれながら母と共に屋根裏部屋に追いやられ、育てられた。

一切の自由が許されず、屋敷から出ることもできず、

屋敷にいる同じ年頃の少年少女とは話すこともできず、

ただ一人の話し相手は実母だけだった。

しかし大蔵家に認知された遊星は

大蔵家男子として恥じないように家庭教師たちに厳しく育てられていた。

 

そんなある日、母から今日は絶対に部屋から出ないようにと言われる。

おとなしくその言葉に従っていた遊星は、

外から聞こえる女の子の泣き声に、

母の命を破って思わず部屋から出てその少女を助けてしまった。

少女の名前は大蔵りそな、本妻の愛娘だった。

 

りそなの前に遊星が姿を現したことを本妻に激怒され、

遊星は一人、フランスのワイン倉へ飛ばされる。

母の死に目にも会うことが許されず、

自分の生きる意味を失いかけていた時に

出会ったジャンに遊星は希望を与えられ、

以前から遊星に目を付けていた腹違いの兄、

大蔵衣遠に日本に連れていかれることになる。

兄とジャンが世界的に有名なデザイナーということもあって

デザイナーとしての知識を徹底的に叩き込まれ、

デザイナーとしての道に憧れるも、

衣遠によって才能なしと見放され、妹りそなの世話役を任されていた時、

ジャンが日本でデザイン学校を開くことを知った。

 

どうしても通いたいと思ったが、そこは女子校。

しかも兄が学園長代理を務めるとあっては身分を偽って通うのも難しい。

そんな時、りそなに大金持ちの子女だけで作られたクラスには、

それぞれサポートとしてメイドを一人連れて授業を受けることが許されており、

メイドは正確には生徒ではないため、身分のチェックが甘いことを教えられる。

そして折よく、そのお金持ちのご令嬢がりそなの友人の一人で

サポート役のメイドを一人探しているので

試験を受けてみてはどうかと言われた。

どうしても夢をあきらめきれない遊星は、

かくして、桜小路ルナのメイド「小倉朝日」として

フィリア女学院へ通うことになったのだった。

 

という、懸命にデザイナーを夢見て

完璧なメイドを演じながらもフィリア女学院に通い、

パタンナーとしての才を桜屋敷のお嬢様たちに見出された朝日は、

彼女たちと共に服飾学校で奮闘することになります。

 

設定は暗いながらも、

明るく、慎ましく、勤勉で意外とオールマイティな主人公と、

デザイナーとしての才能あふれるお嬢様との、

百合百合しく、明るく、テンポの良いコメディです。

主人公が非常に好感を覚える爽やかなタイプとして描かれており、

一生懸命で行動力のある主人公がストーリーを引っ張っていきます。

とんとんとテンポよく流れるストーリーと小気味よいセリフ回しは、

明るく朗らかで、楽しく進んでいくのでとても読みやすいです。

こういうジャンルの、女装、ご令嬢、メイドといったフレーズに

プレイヤーが期待するものに全力で応えてくれます。

 

また、終盤への怒涛の展開、そこから一気に

進んでいく緊迫感あふれるシナリオと、

起承転結、コメディとシリアスのバランスも良く描かれています。

 

ただしそれはあくまでもルナ・ユルシュールルートだけであり、

もう一人のライターが担当している

瑞穂・湊ルートとの格差が激しすぎています。

瑞穂・湊も酷すぎるという程ではないのですが、

ルナたちのシナリオが良すぎたのもあり、

そのクオリティが段違いなためにちょっと彼女たちのシナリオが

可愛そうな出来になっていますね。

全員が同じレベルのストーリーならばシナリオは

9の点が付けられたのですが、

瑞穂達が大分足を引っ張ったのもあって7点を付けています。

 

 

 

システムは普通〜良い目です。

アドベンチャーに必須のシステムは一通り揃っています。

オートセーブ、クイックセーブ、履歴からのジャンプも完備。

シーンスキップがあるのは便利でしたね。

セーブはその時の画面とプレイ日時、ゲーム日時、

その時のテキストが10文字程度表示されており、分かりやすいです。

 

ただ、エクストラシナリオでオート中に止まって

進まなくなったことが数度ありました。

こちらでページ送りをしてやればいいのですが、

何度かあったのが気にかかりました。

 

オートモード中に何も操作しなければ

光度が落ちるというVITAの欠点が制御されておらず、

オートモード中は絶えずボタンか画面に触って光度が落ちないように

プレイヤーがしてやらないといけません。

前面のタッチ無効が出来ないために、

何かボタンか画面を触るしかないのが辛い。

 

 

 

グラフィックは二人の絵師を採用しています。

一人としてみればさほど悪いものでもないのですが、

もう一人のイラストは透明感があって非常に華があり、

服装にもデザインの良さが光る美しい絵柄なので、

その落差が悪目立ちしてしまっています。

口の悪い言い方をしてしまえば統一感がなく、

二人の絵師の立ち絵が並び立つと

その魅力の差が歴然としてしまっています。

絵師は一人で統一してしまった方が、

クオリティは上がっただけに残念です。

 

 

CGの枚数は差分抜きで89枚。

ボリュームが少なめですので枚数は普通〜やや多めのレベル。

差分が少なめであり、文章に合っていないCGもあったのは残念です。

もう少し表情の差分が欲しかった。

一方は華のある絵柄、構図なのですが、

もう一方がもうちょっと動きのある絵が多ければ良かったですね。

アップのCGがやや多めになっています。

色の塗りは透明感があり、ふんわりとやわらかな

艶のある綺麗な塗をしています。

背景もご令嬢のお屋敷等、とても豪華に凝って描かれています。

 

 

 

プレイ時間は約20時間程度。

時間が表示されないタイプで正確な時間が分かりませんので約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

主人公の設定は暗いものの、明るくテンポよく進む百合風コメディです。

ただ明るいだけでなく、メリハリの効いたシナリオの終盤は必見です。

ただし、ヒロイン毎にシナリオの出来の落差が激しいのと

ボリュームがないのは要注意です。

こういうジャンルが好きならばお勧めです。




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