Twelve (トゥエルブ)

〜戦国封神伝〜

 

一言感想

あくまでもストーリーが主役

 

グラフィック 8点
シナリオ 9点
ボリューム 8点
快適さ 6点
満足度 7点
総プレイ時間 33時間
総合評価 78点

 

 

主人公はその日暮らしの気ままな旅の剣士。

ふらりと山をさ迷っていた所、

武将に追いかけられている一人の少女を助ける。

彼女の名前はティエン。

魔神の力を借りて全国制覇に乗り出している尾張のマサナガのもとより、

生贄になるところを逃げ出してきた葵家の姫君だった。

 

時は戦国。

魔神の力を借りているという尾張のマサナガがめきめきと頭角を現していた。

精霊と魔神という、人にあらざる者達が人と共にあった時代、

魔神を蘇らせようとするマサナガと、

それを何としてでも阻止しようとする精霊の帝。

精霊の帝を味方につけたティエン達は、

十二支の精霊の力を受け継ぐ者達を集めていき、

マサナガを止めるために動き出した。

 

 

というストーリーです。

時代は丁度戦国時代をモチーフにした、和風ファンタジー。

ただし時代設定は幅広く、古くは源平合戦から、

新しくは江戸時代にあった出来事まで絡めており、

やや無節操気味なところがあるものの、

それらの実際に史事にあった出来事を、

上手にまとめて綺麗に昇華させ、破綻していないのは見事です。

 

史事にあったことをありとあらゆるところで上手く使っているのですが、

その使い方がとにかく巧み。

私はあまり歴史には詳しくはありませんが、

あの時代の頃に詳しい方ならば、ニヤリと来る設定が目白押しです。

それでいて先が見えすぎるというところは無く、

(もちろんある程度は分かりますが)

独自のアレンジがかなり加えられており、

とにかく話を先に、先に進めるのがとても楽しみでした。

戦国時代という、魅力的だが

使い古されている題材を使っているにもかかわらず、

新鮮で、ある意味斬新な演出は、とにかく秀逸です。

これほど歴史的事実を上手く使ってきているとは思いませんでした。

 

また、各キャラクターがとても魅力的です。

こういう沢山の人が集まって〜的なSRPGでは

空気のような人がどうしてもいるわけですが、

全員を上手く活躍させ、会話にもきちんと加わらせており、

この人誰だったかな?という人がいません。

そういう意味ではキャラ立ちやキャラクターの使い方が非常に上手い作品。

こういうところもサモンナイトに通じるところがありますね。

 

お話は章形式で進んでいき、章と章の間には

弁士によりストーリーや近況、周りの状況が語られるのですが、

この弁士の存在自体がちょっと異色です。

裃風の衣装を着ているわけですが、

弁士が髪をお団子に結い上げた可愛らしい女の子なのです。

なのに男口調。

あの容姿で「ござ候〜」とか言われると、とても違和感があります。

奇をてらいすぎず、あれは普通か、

ナレーションだけで良かったのではないかと思いますね。

 

 

一応ジャンルとしてはシミュレーションRPGなのですが、

難易度はとにかく低いです。

おまけに敵のAIがとても馬鹿。

さくさく進める、という意味ではいいのかもしれませんが、

筋金入りのシミュレーションRPGプレイヤーは

手を出すのを止めておいた方がいいほど、簡単です。

 

まずシミュレーションパートのシステムですが、

システム的には難易度が低い点を除けば他シミュレーションとあまり変わりません。

タイプはサモンナイトとよく似ていますね。

攻撃の順番は、味方ターンから始まるシステム。

側面や後ろから攻撃するとダメージが高くなり、

キャラクターごとにZOCが設定されています。

 

この作品オリジナルなのが、応援、コンボ、クリップです。

「応援」は補助コマンドで、一回使うと次ターンは使えないのですが、

絶対攻撃を避けるとか、もう一度再行動できるとか、

移動距離が伸びたり等強力なコマンドがかなりあって、

これも難易度の低さに一役買っていますね。

ボスの攻撃(魔法、特殊攻撃含む)すら絶対避ける補助コマンドは

他ゲームではちょっとないと思います。

しかもこの補助コマンド、かなりの人数が所持しているのです。

 

コンボ、クリップはいわゆる必殺技ですね。

コンボは意気という、MPのようなものを使用して、

タイミングよくボタンを押すものですが、

クリップは移動距離を犠牲にして使用するもの、ぐらいの差異です。

もう少し差別化が欲しかったですね。

あるいは一方だけにするとか。

 

 

難易度ですが、敵の攻撃してくるユニットがバラバラなのも

難易度の低下に繋がっています。

普通は、攻撃できない相手、HPの低い相手、防御の低い相手を

敵が集中的に狙ってくるのがセオリーなのですが、

このゲームに関してはほとんどそれが無く、

また、側面や後ろから攻撃するとダメージや命中率が上がるにもかかわらず、

ご丁寧にも正面から攻撃してくれるのですね。

 

そして一部のキャラクターが強力なことが上げられます。

いわゆる魔法ユニットなわけですが、

そのユニットが範囲攻撃術を敵の固まっているところで放てば

敵はほぼ瀕死状態になります。

それを他ユニットで刈り取っていくという戦法と、

そのユニットを再行動させてもう一度術を放つという戦法がとにかく強力です。

これで勝ってしまえるというのはいかがかな、とも思いますね。

ユニットのHPがゼロになってもその面のみ退却するだけで、

次の面ではペナルティなく通常通り使用できますし、

ボスクラスのユニットを倒せば一気に数レベル上がってしまう等、

とにかく難易度の低さを上げれば枚挙にいとまがありません。

シミュレーションの初心者用としてはいいのかもしれませんが…。

 

この作品には各キャラクターに好感度が設定されており、

好感度が高い相手とエンディングを迎えることになります。

実際には試していないのですが、同性同士のエンディングもあるようですね。

こういうところもサモンナイトタイプです。

キャラクターが実に魅力的に描かれている今作では、

こういうマルチエンディングは実に相性が良く、お気に入りのキャラクターと

エンディングが語られるのはなかなかいいですね。

ただ、ちょっとあっさり目なのが残念です。

 

 

グラフィックは塗り、キャラクター共にとても綺麗です。

絵柄は可愛らしく、どちらかというと少女マンガに近いイラストですね。

可愛らしいものの、万人向けのデザインで、

あまり好き嫌いの分かれないタイプかと思います。

せっかく綺麗ですので、一枚絵を使って

もっと表現の幅を広げて欲しかったところです。

また、ちょっときつめな展開があるので、

もうちょっとシャープな絵柄が良かったような気もしますが、

あまり問題のないレベルですね。

 

ちょっと気になったのが立ち絵です。

レベルは悪くないのですが、立ち絵を左右反対にさせるのはもう、

このジャンルではデフォルトなのでしょうか?

着物のような衣装を皆着ているのですが、

そのあわせが、右が上になったり左が上になったり、

飾りが左右逆になったりと、すごく気になりました。

 

画面はさすがPSP。

私が始めてやったPSPソフトというのもあると思いますが、

とても発色が美しく、背景グラフィックも実に綺麗です。

携帯機としては、実に美しいですね。

 

 

プレイ時間は、声を全て聞き、寄り道を殆どせず、退却なしで33時間。

大体の方が30時間前後ぐらいになると思います。

ボリュームとしては、携帯機では十分でしょう。

主人公は男女、二タイプありますので、

どちらもプレイしてみる、という方は倍ぐらいになりますね。

また、マルチエンディング(正確にはマルチパートナーエンディング)ですので、

複数のお気に入りキャラがいる方はもっと増えるでしょう。

 

和風歴史ファンタジーというのがぴったりなストーリーで、

歴史的事実を上手く生かし、かつオリジナル要素を盛り込んだお話はとにかく秀逸。

ストーリーはとてもいいですね。

 

ただし、シミュレーションとしては見ない方がいいゲームだと思います。

シミュレーションとしては全く歯ごたえがなく、とにかく容易。

その分さくさく進めて続きのストーリーを楽しめるという、

テンポの良さにはプラス要素に働いてはいるのですが、

筋金入りのシミュレーションプレイヤーは

絶対に手を出すのを止めておいた方がいいでしょう。

 

和風ファンタジーというストーリーを楽しみたいというのならいいのですが、

シミュレーションとしてみるのならばまず回避ですね。

超初心者用シミュレーションゲームです。

シミュレーションパートはストーリーを語る上での演出である、

というぐらいにとどめておいた方がいいでしょう。




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