うたわれるもの

散りゆく者への子守唄

 

一言感想

シミュレーションはストーリーの表現方法のひとつ

 

グラフィック 7点
シナリオ 9点
ボリューム 7点
快適さ 7点
満足度 9点
総プレイ時間 47時間
総合評価 81点

 

 

大怪我を負っていたところを村娘に助けられ、

薬師だという彼女、エルルゥに看病されていた主人公は、

自分に対する全ての記憶を失っていた。

けっして外れることの無い白い仮面をつけていた彼を、

エルルゥの祖母でありその村の村長である、トゥスクルは息子の名、

「 ハクオロ 」を与えた。

 

看病の末、徐々に身体を癒して行ったハクオロは恩返しとして、

辺境の地にある貧しいその村に、自分の持てる限りの知識を駆使し、

あらゆる手法を教え、村を裕福にしていく。

村で過ごす穏やかな日々。

安寧の中でまどろむかのような小さな幸せは、しかし長くは続かなかった。

 

それは突如として起こった。

領主が裕福になっていく村に言いがかりをつけ、

村人が生きていけないほどの重い増税を課す。

異を唱えたエルルゥの妹アルルゥを庇って村長は、兵士に殺された。

湧き上がる騒乱。引き返せない道。

生きることが出来ないほどの重税をかけられ、

皆が尊敬していた村長は無残にも殺された。

追い詰められた彼らに残された道はひとつきり。

戦乱の世は、開かれた――。

 

 

というストーリーです。

引き返せない道を歩み、皇を倒したハクオロは、

その国の皇となり、国を治めていきます。

やがて周辺国を巻き込む戦乱の世に身を投じていくことになり、

それを陰で操っている人物を追いかけていくごとに、

彼の失われた過去がつまびらかになって行き、

この世界にまつわる神話や創世の謎に迫ります。

 

ストーリーは丁寧に描かれています。

キャラクターは良く立っており、皆魅力的です。

特に丁寧に描かれているのがアドベンチャーパート。

彼らの日常がふんだんに用意されており、そのエピソードが実に楽しい。

ただ、その分日常のアドベンチャーパートが長すぎており、

また時間列に関係なく、ぽつぽつとエピソードが

語られていくという手法のため、中だるみします。

移動する場所によりアドベンチャーパートが展開していくのですが、

基本的に一本道であり、ほぼ全てのアドベンチャーパートを見ることになりますので、

移動する場所を選ぶ、というシステムは正直いらなかったのではないかと思います。

 

また、ストーリーですが基本的に立ち絵とテキストで進められているため、

演出力不足なのがかなり目に付きました。

私の場合アニメの方も見ておりますのでほぼそのシーンが思い浮かぶのですが、

ゲームから入った方はかなり苦しいのではないのでしょうか。

チビキャラに演技させるなり、CGを表示させるなり、

せっかく出来の良いアニメーションを多用するなり、

方法がいくつもあったと思いますので、その辺は残念ですね。

 

終盤になるとストーリーが駆け足になり、

説明不足になるのはちょっと気になる部分です。

また、ファンタジーかと思っていたらいきなりSFになるのも

賛否両論あるかと思います。

最初から混ざっているのならともかく、

途中からがらりと切り替わるのを嫌がる人は多いと思います。

 

一応ジャンルとしてはアドベンチャー+シミュレーションRPGなのですが、

シミュレーションとシミュレーションの間が数時間あるものもあり、

またシミュレーションパートの難易度は、演習が出来るようになると

途端に低くなってしまうため、

シミュレーションを期待した方は肩透かしを食らうと思います。

その分アドベンチャーパートに非常に力を注いでおり、

シミュレーションパートはストーリーを語る上での

表現方法として用いられているため、

アドベンチャーとして見た方がいいゲームですね。

 

 

システムですが、アドベンチャーに必要なものはほぼ揃っています。

が、気になったのはオートモードが無いこと。

メッセージはいちいちボタンを押して

ページ送りをしなければならないのが面倒ですね。

アドベンチャーに近いゲームですので、

このシステムが欠けているのはちょっと痛いです。

 

ゲームを再開した時、再開前のメッセージが

見られる&音声出力できるのはいいシステムです。

これはアドベンチャーなら必須装備にして欲しいシステムですね。

シーン回想というアドベンチャーパートの再現が

TOP画面にあり、これもなかなか良いシステム。

何度でも好きなシーンを再現できるのは素晴らしいです。

 

 

次にシミュレーションパートのシステムですが、

システム的には難易度が低い点を除けば他シミュレーションとあまり変わりません。

攻撃の順番は、敵味方に関係なく速さの高い者から

順番が回ってくるというシステム。

側面や後ろから攻撃するとダメージが高くなり、

キャラクターごとにZOCが設定されています。

敵に攻撃をすると、技数の多いキャラクターの場合白い円が現れ、

その時にタイミングよくボタンを押せば

追撃が行われるというシステムは結構楽しかったです。

 

攻撃したりするたびに気力が溜まっていき、

気力がMAXの時に赤い円が現れ、その時にタイミングよくボタンを押せば

キャラクターグラフィックが表示されて必殺技が出来るのは

派手でよいのですが、その必殺技が強力なため、

難易度の低下に拍車をかけてしまっているのは残念ですね。

 

協撃出来るキャラクターが近くにおり、二人とも気力がMAXの時、

広範囲の攻撃が出来るのですが、

難易度が低く、必殺技の方が簡単に出せるために

協撃は殆ど使いませんでした。

この辺ももったいなかったですね。

 

難易度ですが、演習が行えるようになると簡単に、かつ

いくらでもステータスの底上げが出来てしまうのがかなり問題です。

また、敵の攻撃してくる相手がバラバラなのも難易度の低下に繋がっています。

普通は、攻撃できない相手、HPの低い相手、防御の低い相手を

敵が集中的に狙ってくるのがセオリーなのですが、

このゲームに関してはそれが無く、

敵が狙ってくるのはランダムか、

もしかすると防御力の高い者を率先して狙っているのではないかと思うほど。

この為、弱いキャラクターを前線に出しても撃破されにくいのは

シミュレーションとしてはどうかと思います。

 

それと術法(要するに魔法系)キャラクターの攻撃力が

極端に低いために全く活躍できないのがかなり気になりました。

他キャラクターが200〜300ぐらいのダメージを与えられるのに対し、

100弱のダメージではお話になりません。

その為、術法キャラクターは全く使えないユニットになっているのは大問題ですね。

 

 

グラフィックは塗り、キャラクター共にとても綺麗です。

可愛らしいものの、万人向けのデザインで、

あまり好き嫌いの分かれないタイプかと思います。

移植に関して追加された絵にちょっと違和感がありますが、

立ち絵とCGにも違和感なく、原画はキャラクターデザインを

手がけられている方が描いている為、画力共に安定しており非常に魅力的。

チビキャラも可愛らしく、本来の絵をデフォルメして、

上手に表現していてかなり出来がいいですね。

細かいところも綺麗に再現されています。

 

CGの枚数は差分抜きで約50枚と、アドベンチャーに偏っている

ゲームとしては非常に少ないです。

ここにCGやムービーが欲しいと思うところが随所にあり、

圧倒的に枚数が足りません。

この倍、100枚+アニメーションが欲しかったですね。

それと、キャラクターが多いためにしょうがないと言えばそうなのですが、

立ち絵のバリエーションが少なめなのも残念です。

 

 

プレイ時間は、声を全て聞き、演習を丁寧にこなして47時間。

その為に私のプレイ時間はかなり長い目です。

演習をこなさず、声を飛ばすと20〜30時間ぐらいになると思います。

アイテムは全て集めていません。

ボリュームとしてはやや少ない目〜普通ぐらいかと思います。

 

ストーリー、特に日常パートは素晴らしいものの、

ファンタジーかと思っていたらいきなりSFになると、

やや人を選ぶストーリーですが、

その世界観、キャラクターの描き方は見事です。

声はアニメからそっくりそのまま採用している実力派声優が勢ぞろいしており、

皆キャラクターに非常に合っている配役のために、

是非、声を全部聞きながらプレイして欲しいですね。

 

ただし、シミュレーションとしては見ない方がいいゲームだと思います。

シミュレーションとしては全く歯ごたえがなく、

アドベンチャーパートが長すぎます。

 

アドベンチャーとして見るのならばお勧め出来るレベルなのですが、

シミュレーションとしてみるのならば回避した方がいいでしょう。

私の場合、アドベンチャーとして評価しているために

評価は高い目に設定してあります。

そういう意味では、癖のあるゲームですね。



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