うたわれるもの

 

偽りの仮面

 

一言感想

FCの絶叫再び

 

グラフィック 10点
シナリオ 10点
ボリューム 5点
システム 6点
快適さ 7点
満足度 9点
総プレイ時間 52時間
総合評価 83点

 

 

 

朦朧とした意識の中、少女が自分を優しく見下ろしていた。

もう少し寝ていていいんだよという言葉に従う様に、目をつぶったその後、

いきなり雪山のど真ん中に立ち尽くしている状態で我に返る。

行くも帰るもわからず、異常な薄着に震え、どうしようかと思い悩む男の目の前には、

巨大なムカデのような虫が、自分に襲いかかろうと待ち構えていた。

命からがら逃げ回る途中、大きな穴から地下へと落ちると、

今度は赤いスライム状の巨大な生き物らしきものが現れた。

自分に襲いかかろうとした虫をスライムは丸ごと咀嚼し、

次いで自分へにじり寄ってきた途端、少女の声が耳を打つ。

指示通りに目を瞑った彼の腕を引き、

恐ろしい膂力で彼を連れたまま壁を駆け上がった少女は、

自分が取りあえずの住居にしている天幕へと彼を連れ帰った。

 

彼女の名前はクオン。

雪山で倒れていた彼を助けて天幕で介抱していたが、

少し目を離した隙に居なくなって心配して探しに来てくれたのだという。

名前を尋ねられ、名前はおろか、

記憶のすべても失っていることに気づいて、男は呆然とした。

 

クオンに「ハク」と名付けられた彼は、

クオンと共に働き先を見つけるために帝都へ行くことになります。

 

 

ストーリーとキャラクターがとても丁寧に描かれており、皆魅力的です。

ジャンルは一応SRPGなのですが、

アドベンチャーパートが大部分を占めており、

2時間以上戦闘パートはなく、アドベンチャーパートが

連続することがほとんどなので、

ほぼアドベンチャーだと捉えていいと思います。

ストーリーは日常の描写が多く、時系列を無視してショートストーリーを読み、

ショートストーリーを全部読み終わると本筋へと進むというタイプ。

どのショートストーリーも上手に起承転結を付けて

短いながらも良くできています。

基本的に一本道であり、全てのアドベンチャーパートを

結局は見ることになりますので、

移動する場所を選ぶ、というシステムは

いらなかったのではないかと思います。

 

最初はまったりと日常メインで進むものの、

中盤以降の疾走感が素晴らしく、事態が動き出したり、

ハクの記憶が明らかになっていく毎に俄然面白さが増してきます。

日常パートを丁寧に描き、

キャラクターを生かし、魅力的に描いているからこそ輝く中盤以降のストーリーですね。

緩急の付け方が上手く、非常に巧み。

終盤の激動には食いつくようにプレイしてしまい、

特に終わりは、プレイ後に動揺のあまり何も手がつかなくなるぐらいの衝撃でした。

素晴らしいストーリーでしたが、

とんでもないところで終わっているために注意が必要です。

区切りのよいところで終わってはいるのですが、

とても続きが気になる場面で終わっており、

次号へ続くといったところでバサッと切られているため、

そこは大いに注意すべきポイントです。

また、SRPGにしてはボリューム不足です。

戦闘パートを繰り返しプレイすることが可能なのですが、

それをプレイしなければ20時間ほどで終了する人もいるようです。

 

 

 

次にシュミレーションパートなのですが、

スティングが担当しているだけあって

非常に噛み応えのある難易度となっています。

システム自体がほぼ完成されているSRPGというジャンルにおいて、

これだけバリエーションを増やしたり

新たなシステムを思いつけるのかと感心してしまうのですが、

その分複雑怪奇にしてしまって

プレイヤーがそのシステムを使いこなせないレベルに仕上げてしまうのが

スティングの悪い癖ですね。

 

連撃という、丸い円が狭まった時にタイミングよくボタンを押したり、

リボンが円状に流れたりするのを長押しし、

円が完成するタイミングで離すことで次の連撃へ繋げたり、

クリティカルが発生したりするようになります。

一見簡単なように見えて、そうでないのがスティングですね。

 

連撃を繋げたり回復するのに気力が必要だったりします。

気力を増やすには攻撃・連撃が必須なのですが、

ある攻撃は1〜2連撃目は気力が増えるのに、

3連撃以降は反対に気力が減ったり、

特定の攻撃・回復方法は初めからある一定以上の気力が必要だったり、

移動後は使用不可だったりと複雑です。

気力が減るか増えるかは各キャラクターのステータス画面で確認しなければならず、

各キャラクター、攻撃ごとにいる気力、増える気力が千差万別であり、

プレイヤー側でそれを全部覚えて使いこなすのが非常に難しい。

 

装備、錬技、特性もキャラクターごとに様々であり、

その特性をうまくつかんで使いこなせるようになると楽しいのでしょうが、

複雑すぎて使いこなせません。

 

また、戦闘バランスが非常に悪く、

防御に秀でたキャラクターでも敵の攻撃で一撃死することがざらです。

敵の攻撃力やスピードがインフレしすぎています。

このゲームはユニットが倒される=ユニットの死亡ではないため、

1人でも生き残ってある特定の勝利条件を満たせばいいのですが、

ほぼ壊滅状態になって辛くもクリアという状況が

終盤以降はほとんどになると、ストレスがたまります。

ユニットが倒されていても一切のペナルティはないものの、

もう少しこのあたりのバランスを調整してほしかった。

 

 

システムですが、アドベンチャーに必要なものはほぼ揃っています。

文章の履歴も見られるのですが、1行ずつなのがちょっと辛いですね。

全画面表示で画面全体に表示してほしかったです。

前作である散りゆく者への子守唄にはあった

シーン回想というアドベンチャーパートの再現が

なくなってしまっているのは非常に残念です。

 

 

 

グラフィックは塗り、キャラクター共に最高水準で非常に魅力的。

はっと目を引く独特の魅力がありますね。

色の塗りはふわりとした柔らかな塗りながら美しく、構図も華があります。

やや可愛らしいものの、万人向けのデザインで、

あまり好き嫌いの分かれないタイプかと思います。

渋いも可愛いも綺麗も、上手に描き分けるタイプ。

立ち絵とCGにも違和感なく、安定しています。

チビキャラも可愛らしく、本来の絵をデフォルメして、

上手に表現しています。

無理に等身を上げて微妙な3Dにされるより、

こういうタイプにして正解だったかと思います。

 

CGの枚数は差分抜きで47枚、

ギャラリーに入らない夢幻演武クリア後に表示される

隠しCGがプラス1枚、合計48枚と、

アドベンチャーに偏っているゲームとしてはまずまず。

ボリュームがかなり少ないので、特に枚数は問題ないと思います。

差分も結構あり、大きなCGもところどころ使用されていて非常に美麗です。

 

 

 

プレイ時間は、丁寧に戦闘を何度も繰り返し、

レベルを上げて本編クリアに31時間。

戦闘パートを繰り返しプレイしない場合は

20時間ぐらいのクリア時間になると思います。

クリア後に解放される難易度の高い夢幻演武をクリアして52時間です。

夢幻演武はレベル上げ、BP稼ぎ必須で、

ほとんどのキャラクターがレベルMAX近くないとクリアできません。

夢幻演武の内容はとんでも展開、ボイスなしなので、

戦闘パートが苦手な方は無視した方がいいでしょう。

 

ストーリーは抜群に良く、CGも非常にレベルが高いが、

アドベンチャーに偏っているゲームとしては戦闘パートが高難易度で、

さらにとんでもないところで終わっているのが要注意ポイントです。

あの終わり方は衝撃が大きかった。

綺麗に終わっていたならば90以上の点数が出て

当たり前のレベルのゲームでしたので、非常に残念です。

ストーリーも本来は続編をプレイし終わらなければ

正確な点数を出せないのですが、

それでも満点を出してしまうほど素晴らしかった。

続きはいつ出るのだろうかと泣きそうな思いをすることになりますので、

途中で終わるタイプが嫌だという方は、

続編が出てからプレイされた方がよろしいかと思います。




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