シルヴァリオ ヴェンデッタ

 

Verse of Orpheus

 

一言レビュー

泣きながら光を喰らう逆襲劇

 

グラフィック 9点
シナリオ 8点
ボリューム 7点
快適さ 9点
満足度 8点
総プレイ時間 35時間
総合評価 85点

 

 

 

世界のエネルギー枯渇が叫ばれていた西暦2500年代。

日本は未知の素粒子、星辰体(アストラル)を発見した。

その後、その新たなエネルギー技術を奪い合う第五次世界大戦が勃発。

西暦2587年、星辰体技術に関しては随一の科学力を誇る日本の、

星辰体を用いた動力炉が暴走し、未曽有の危機が訪れた。

震源地であった日本を中心に、

ユーラシア大陸を巻き込んで陸地が消滅・移動する

世界規模の大震災が発生。

それ以降、空には第二太陽「アマテラス」と言われる星辰体発生源が浮かび、

地球環境に激烈な変化をもたらし、世界大戦は混乱の末終結した。

 

そこから約千年後。

旧西ヨーロッパに位置する軍事国家アドラーは、

日本軍が誇っていた星辰体技術の再現に成功し、

その科学力は他国を圧倒するに至っていた。

星辰体技術を用いた、人を驚異的な能力者

星辰奏者(エスペラント)に仕立て上げる技術は

他国の追随を許さなかった。

新西暦1027年、そんなアドラーが、

未知の生命体二体の襲撃を受けていた。

 

星辰奏者に類似の能力を持ちながら、その能力値が桁違いの化け物は、

市街地を炎と氷が彩る死地へと変えていた。

星辰奏者すらも瞬殺する二体の化け物に立ちはだかったのは、

帝国最強にして初の星辰奏者であるクリストファー・ヴァルゼライド。

彼らの凄まじい激闘の影で、護衛を任されていた少女ミリィを抱いて、

ゼファー・コールレインは咽び泣きながら彼らに怯えていた。

度重なる過酷な軍務に心を壊しかけていた彼は、

その戦いに背を向け、少女を胸に、その場から逃げ出した。

 

かくして脱走兵となったゼファーは、少女ミリィを妹とし、

敗残者として過ごすに至っていた。

成長し、技術者として優秀なミリィに養ってもらうという、

建前上紐兼無職を謳歌するゼファーは、

ある日、親友であり裏の仕事の依頼主であるルシードに、

とある仕事を頼まれる。

「帝国が厳重な警備で搬送している荷物の正体を突き止めてくれないか?」

かくして、その仕事を元に、

ゼファーの閉じられていた世界は動き出すことになります。

 

 

これは、英雄が主人公のお話ではありません。

はっきり言えば、敗残者、脱落者のお話です。

主人公ゼファーはやればできる能力があるものの、基本やる気がなく、

常に凄まじい能力者に囲まれて

劣等感に晒されていた過去を持つために自己評価が著しく低く、

一度そんな者達に木端微塵に心を砕かれた過去を持ちます。

もう嫌だと心が挫けそうになっていた所に完膚無く止めを刺され、

完全にやる気を失っています。

また、生来の臆病で平穏を好む性格により、

全力で逃げ回ってなかなか立ち向かおうとはしません。

みっともなく逃げ回る様は、今までの主人公とは真逆なタイプですね。

 

それでも自分とヒロインを執拗に追いかけてくる運命に、

泣きながら、怯えながらも懸命に相対することを決める

ゼファーの覚悟や懊悩は実に良かった。

そしてヒロイン達が時に可憐に、実に雄々しく彼を支える様は、

圧倒的な戦闘力を持つ敵方の突き抜けた魅力に反して、

主人公のみっともなさを加味し複雑な色を添えています。

なんとも見劣りする主人公で、実に人間味溢れる駄目な人物に描かれており、

ヒロイン達の方がよっぽど性根が座っていて凛々しいのですが、

それでも最後は泣きながらも立ち向かおうとするところは好感が持てます。

主人公を良く頑張ったと褒めてあげたくなりますね。

ヒロイン毎に全く違う人生を歩むことになるのも良かった。

 

 

 

システムは基本、相州戦神館學園で使われていた物ですが、

目覚ましく進化しています。

やっとVITAの光度制御が備わりました。

オートモード時には画面を触ったり操作したりせずとも、

高度が落ちなくなっています。

相州戦神館學園での履歴表示の異常な遅さもなくなり、

素早く履歴が表示されように改善されています。

ただ、表示される文章履歴が大分少なめになっていますが。

 

システム設定も実に細やかに設定でき、非常に使いやすくなっています。

アドベンチャーならば有ってほしいシステムをほぼ網羅していると思います。

唯一残念なのはセーブ関連。

オートセーブ、クイックセーブ、

履歴からのジャンプの類はなく、セーブも見辛い。

その時の画面のみで、しかもその画面も小さく、

どのセーブかわかり辛いです。

残念だったのはこれぐらいで、

とにかく素晴らしく使いやすくなっていました。

 

 

 

グラフィックは綺麗系で、可愛さも、異形も、

渋い親父も見事に描き分けています。

構図も派手で華があり、エフェクトも非常に頑張っていて

戦闘シーンを上手に彩っており、完成度が高いです。

眩い光彩の入れ方も美しいですね。

今回はCGをかなり大きなサイズで入れているものも多く、

前作までにあったCGを無理矢理拡大していることによる

シャギー感もほとんどなくなっています。

戦闘関連のCGもかなり多くなっており、

主人公のバリエーションも豊かです。

CGも一部を見せたり、拡大したり、エフェクトを追加したりと、

かなり見せ方の表現を頑張っていると思います。

 

CGの枚数は差分抜きで72枚。

ボリュームに対してCGの枚数がいささか物足りなく感じます。

このボリュームでしたら、100枚弱ぐらいは欲しかった。

差分はかなり頑張っており、中には20枚近く差分があるものもあります。

戦闘関連のCGの差分も多く、こちらの枚数は結構多めです。

 

 

 

プレイ時間は約35時間程度。

時間が表示されないタイプで

正確な時間が分かりませんので約の時間です。

プラチナトロフィーを取得しています。

 

今までのlight作のライターよりも

随分読みやすく、素直な文体をしています。

ヒロインがちょっと少ないのが残念ですが、

みっともなく足掻きながらもヒロインと共に

泣きながらも頑張る主人公はしょうがないなと思いながらも好感が持てます。

 

熱いバトルものとしては毛色が違っていてなかなか良かったものの、

あくまでも敗残者、汚辱にまみれた情けない男の物語ですので、

今までの挫けず逆境から這い上がる、

眩く白く、なんでもできる格好良い主人公を

期待していると肩透かしを食らいます。

駄目っぷりをとことん突き詰めているのは、反対に新鮮でした。

個人的にはこういう主人公もありかと思います。




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