WHITE ALBUM2

幸せの向こう側

 

一言レビュー

ねっとりとした泥沼の心理描写と三角関係

 

グラフィック 9点
シナリオ 10点
ボリューム 9点
快適さ 9点
満足度 10点
総プレイ時間 72時間
総合評価 99点

 

 

それは高校3年の学園祭を目前に控えた時。

軽音楽同好会の一人、しかし下手なうえにギターが二人いるバンドで、

裏方に回る予定だったギター担当の北原春希は、

親友の飯塚武也を残して、全メンバーがやめるという、

空中分解に愕然としていた。

 

それでも心のどこかで諦めきれずにギターを爪弾く中、

隣からはいつものように春希のギターに寄り添う、

抜群に上手いピアノが流れ出す。

正体不明のピアニストは、お隣の第二音楽室に鍵をかけ、

カーテンをびっちりとひいて閉じこもるという念の入れようで、

今までに幾度かセッションをしていたものの、

どこの誰とも知れないままだった。

最後に一番好きな「WHITE ALBUM」を

演奏して終わりにしようと、弾き出したその時。

透き通った美しい歌声がギターとピアノに重なった。

 

歌声の持ち主が屋上にいると気づいた春希は、

演奏を無理矢理断ち切って音楽室を飛び出した。

屋上にいたのは小木曽雪菜。

二年連続ミス峰城大付に選ばれ、今年のミスもほぼ確定、

要するに三年連続ミス峰城大付と目されている、

学園一の美少女、皆の羨望の的のアイドルのような存在だった。

 

なんとか彼女をかき口説き、是非とも軽音楽同好会のボーカルへと誘う中、

次なるメンバーは第二音楽室の主だと目当てを付けた春希は、

無謀にも第二音楽室の窓辺に取り付いて、室内を覗き込む。

そこにいたのは素行不良で教師に目を付けられている、遅刻・さぼりの常習犯で、

しかし相反して怜悧な美貌とモデル並みの抜群のスタイルを持った、

春希のお隣の席の人物兼、春希のどうにも気になる女の子、冬馬かずさだった。

 

という、いわゆる文化祭に軽音楽同好会として参加メンバーを探す中、

三人の人物が出会うことから物語が始まります。

二人の美少女に挟まれて、どちらも好きになり、

どちらからも好きになられてしまった春希の、

泥沼の恋愛劇が始まります。

 

作品としては三部作で、高校生、大学生、社会人という、

約5年間でつづられていくという、壮大なストーリー。

常に三角関係で、すれ違う思い、相手に対する情感、

肉欲、情欲、嫌悪、執着、といった、

非常に人間らしい泥臭さ、醜く汚い負の感情を綿密に描写し、

その中にきらりと光る想いが所々に鏤められるという、

胸が押し潰されるような恋愛劇が見事に展開していきます。

従来の綺麗で繊細で美しい恋を描いた恋愛アドベンチャーとは一線を画した、

どこまでも底なしに暗く、生々しく人間らしい複雑な色を持つ感情に

一気に踏み込んで語られる心理描写は圧巻の一言です。

ここまで深く核心に迫って心理を描き、

内面の醜い感情をこれでもかと言わんばかりに盛大にぶちまけた

恋愛アドベンチャーをプレイしたのは初めてです。

 

時を重ねても変わらない恋、

裏切りと苦しみに苛まれて歪になった恋、

その歪んだ関係に苦悩する春希に惹かれるサブヒロインとの恋と、

大きく3タイプに分かれます。

メインは二人のヒロインなのですが、

他のサブヒロインもシナリオが短めということを置いておけば、

どのヒロインも決して手を抜いていないという嘘のように完成度が高い作品です。

ここまで綿密に練られ、昇華され、描写されたアドベンチャーは正直脱帽もの。

圧倒的な力量に裏打ちされた、念入りに描かれた心理と、

素晴らしいストーリーに瞠目せざるを得ません。

 

ただし、常に泥沼の三角関係が描かれ、

主人公やヒロインたちが延々と悩み続けているため、

そういう負の感情を覚える、胸が押し潰されるようなストーリーや、

主人公のどっちつかずの、ふらふらと二人のヒロインへ揺れるという

優準不断さが嫌いといった方は向きません。

そして、このゲームですが、PS3版であるにもかかわらず、

なんとベッドシーンまでもがはっきりと描写されているのです。

もちろんその手のCGは全削除、意味のない喘ぎ声は省略されていますが、

最中のテキストまでもばっちり存在しています。

それも結構多量に。

 

これはさすがに驚きましたね。

ストーリー的に絶対その手のシーンは外せない、

殆どのベッドシーンが無かったことにしてしまうと

決定的に破綻してしまうという作りになっており、

どうしても外せず、可能な限りSONYチェックが通るように修正されていますが、

よくぞここまでその手のシーンを書きこんだと感心させられました。

キスシーンもかなりねっとりと描かれており、

その手のシーンが大の苦手という方は最注意ポイントです。

まさかPS3版でこれが通るとは思いもしませんでした。

 

 

 

システムは基本を押さえ、全方向に配慮した万能タイプ。

贅沢をいえば履歴からのロードがあれば良かったと思いますが、

エンディング後に付け加えられるスペシャルで、

シーン回想モードというそれぞれのエピソードの表題で

読むことも可能になっているのが非常に良いと思います。

そしてなんと、デジタルノベル、ボイスドラマ、

PS3版で付け加えられたエクストラエピソードと、

今までゲーム外で発売されたり、初回特典として付けられたりしたものが

ほぼ網羅されているという贅沢さです。

しかも、これらもシナリオを終えるごとに、

適切な時期に解放されていくという周到さです。

至れり尽くせりですね。

 

 

 

グラフィックは目が特徴的で、はっと目を引く華やかな絵柄。

そして特筆すべきが、その塗の華麗さ、繊細さです。

濡れた艶のあるような、なんとも美しい塗をしており、

塗の丁寧さもあって非常に完成度が高い。

際立って鮮やかな着彩ですね。

パステル調の塗の絵も存在していますが、

これはこれで味となっていて良かったと思います。

立ち絵もほぼ安定しており、

三部作で立ち絵がそれぞれ(一部例外有り)変更になっているという

膨大なバリエーションがあります。

皆、きちんと顔が成長していながらも破綻していないのはいいですね。

ただし、顔にバラつきのあるCGが幾枚かあるのがちょっと気になります。

それと、差分の件がなければ満点をつけたいところでした。

 

 

CGの枚数は差分抜きで125枚。

基本的な枚数はプレイ時間から見ると普通〜やや少なめなものの、

この作品の最大の難点は、差分が非常に少ないということ。

差分があるCGの方が稀であり、まずないと思っていいでしょう。

差分がないとストーリー上どうにもおかしいところがいくつもあり、

もう少し欲しかったところです。

 

 

 

プレイ時間は72時間。

全エンディング、全テキスト読破。

スペシャルのデジタルノベル、ボイスドラマ、

エクストラエピソードも読み、プラチナトロフィーを取得しています。

 

ねっとりと濃密なストーリーでした。

泥沼の恋愛劇に終始しており、そういうのが苦手な方はお勧めできませんが、

巧みな心理描写や完成度の高いストーリーを求める方には

是非ともお勧めしたいと思います。

 

ただし、常に罪悪感と苦悩に苛まれ続ける主人公とヒロインを

延々と見続けることになり、

ほっと一息つけるのはエンディングぐらいですので、

プレイするのにかなりのエネルギーとやる気、

そしてどんなことがあっても挫けない心が必要です。

ですが、常にぐっとプレイヤーを引きつけて離さないという

完成度の高いシナリオは素晴らしい。

これを見たおかげで、他アドベンチャーのストーリーの出来の採点が

大幅に辛くなってしまったほど、他に類を見ない抜群のシナリオでした。

シナリオライターに敬意を払いたいと思います。

なかなかこのレベルにあるアドベンチャーは出ないでしょう。

近年稀に見る秀逸作でした。




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