夢見師

 

一言レビュー

想いと記憶の狭間で

 

グラフィック 8点
シナリオ 8点
ボリューム 6点
快適さ 6点
満足度 8点
総プレイ時間 24時間
総合評価 77点

 

 

高名な夢占い師、夢村登瀬を祖母に持つ夢村広宇は

顔が良いものの、中身はいたって普通の高校生。

自身は夢占いの才を継いでいないと言っているにもかかわらず、

学校の女性陣(通称乙女軍団)に占って欲しいと

追い掛け回され、逃げ回る日々を余儀なくされていた。

 

そんなある日、広宇は自分が奇妙な日々を送っていることに気付く。

1日を2度繰り返している…。

例えば1日目は月曜日、2日目は月曜日、3日目は火曜日というように。

一日を2度過ごし、2度過ごした後は次の日へと進む。

同じ日を繰り返しているために、2日目は今日何が起こるのか知っている。

今日何が起こるか知っているということは、

不遇な未来を変えることができるということ。

 

ある人が怪我をするのならば、怪我をしないように注意し、

悪いことがある場所で起こるのならば、

その場所に行かないようにすればいい。

そうやって悪い未来を塗り替えていくうちに、

広宇は自身が取り返しの付かない代償を払っていることに気付く。

より重い運命を変えたのならば、代償はより多くなる。

では、最も重い運命を変えたのならば、自分はどうなるのか?

最終的に広宇が取る決断とは…?

 

 

というちょっと不思議テイストなお話です。

 

一日を2度繰り返すという設定がとにかく奇抜ですね。

同じ日を2度繰り返すということは、

同じテキストを2度読まされて、

飽きてくるかもしれないと思ったのですが、そんなことはありません。

一日を2度繰り返す設定を上手に使って

同じ2日を過ごさないようにさせ、

なおかつプレイヤーの興味を逸らさせない趣向は、実に見事です。

 

ただ、このシナリオライター氏は文章力という観点から見れば、

さほど高い方ではないと思います。

日本語の使い方が妙なところがチラホラ見受けられましたし、

表現力がいまひとつで、

もう少し勉強して欲しいと思うところがありますが、

物語の構成力自体は高いため、全体的なストーリーはかなり良いですね。

 

ストーリーは章構成になっており、

1章、2章、3章の終盤あたりまでは章毎のヒロインしか攻略できません。

選択肢を選ぶごとにヒロインの好感度を上げていき、

そのヒロインルートへ突入するという従来の恋愛アドベンチャーとは

趣を変えたシステムになっています。

詳しく書くとネタバレになってしまうので避けますが、

かといって二股、三股をかけているわけではなく、

他のヒロイン達と仲良くなっていく主人公を側で見ている

ヒロインの行動や言動はなかなか面白いものがありますね。

実は各章毎に密接な関わりがあり、

章の繋がりの書き方、生かし方も実に上手いです。

 

ただし、これはそもそも18禁として開発されていたものを

コンシューマー版として出したか、

18禁に移植するのを大前提として作られたものだと思います。

とにかく各ヒロインの設定、ヒロインと仲良くなった時の

雰囲気が完璧に18禁向け。

18禁設定を匂わせないヒロインがいないといっていいほど、

とにかく18禁色が強いですね。

こういうのが嫌いという人には向かないでしょう。

 

また、どちらかというとこのゲームは未完の作品になります。

過去を由来とするCGが終盤に、

フラッシュバックのように出てくるのですが、

そのCGに対するストーリーは殆ど語られず、

知りたい人は18禁移植版を買ってくださいといわんばかり。

2度取りするつもり満々なのがちょっと気に入りませんね。

 

 

システムはやや悪いめです。

アドベンチャーとして、求められるものが

一応一通り揃っているものの、実に使いづらいですね。

顕著なのがオートモード。

遅い、普通、早いの三パターンしか調整できないので、非常に使いにくいです。

またバックログも音声再生機能があるものの、

ひと画面に3行しか表示されず、

上のほうへ移動すると文字が一気にすべるように移動するため、

微調整がしづらく、読みにくいです。

システム周りはもう少し突き詰めて欲しいですね。

 

 

グラフィックですが、髪の塗りに特徴があるものの、

なかなか綺麗です。

服の陰影の付け方がちょっとえっちいのが気になりましたが、

全体的にレベルは高いですね。

ただ、ストーリーは短いものの、CGの枚数が

差分抜きで80枚ないのがちょっと少ないですね。

ここにこそCGがほしいということころがちょこちょこありました。

100枚ぐらいは欲しかったところですね。

 

そして立ち絵が3人のヒロイン+祖母しかないのがかなり手抜きです。

登場人物そのものが少ないので、

他のキャラクターの立ち絵も用意して欲しかった…。

アドベンチャーでここまで立ち絵の人数が少ないのも珍しいですね。

 

 

プレイ時間は正確な時間はわかりませんが、24時間。

全ヒロインルート、全CGをフルコンプリートしての時間です。

そもそも全章を攻略しないと物語の全体像は掴めませんので、

大体は20時間前後ぐらいのプレイ時間になるかと思います。

ボリュームはかなり少ない目な物の、

物語の設定上これ以上ヒロインを

増やすことはまず出来ないかと思います。

過去編では可能でしょうが。

 

ストーリーは良い、構成力はなかなか、雰囲気も良い――

ものの、未完成の色があります。

もっと深く知りたい、なおかつアダルトが大丈夫というのならば、

18禁として開発されている方をプレイすることをオススメします。

PS2版でもストーリー自体は良くできてはいるものの、

そのあたりはちょっと残念ですね。


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